こちらは長井朋子さんの作品集「Thousands of Finches」に収録された一枚です。
「ぬいぐるみのたくさんワンピース」と題されたこの作品は長井作品に出てくる女の子たちのような衣装を纏ったはいりさんがしっとりとした古民家に佇んでるシリーズです。
長井さん初の写真作品であるこちらは、ロケーションも長井さん自らで探してこられた場所で、都内にあるハウススタジオなのですが、持ち主さんのお祖父様の邸宅で今回の撮影がこけら落としということであまり手も入っていない状態の全体にほこりがかった、しかし立派な日本家屋でした。
まだ暮らしていらした頃のしつらえがのこる部屋の中は長い年月を感じるとともにどことなく暮らしの時間が止まった寂しさが漂う空間で、それとはまた対象的に日差しの眩しい初夏の昼間に撮影は行われました。
特に長井さんからこういったふうにとってほしいなどの説明などは無く、はいりさんも自らさまざまな表現でそこに“居る”感じを醸し出してくださり、静かに撮影は進みました。
作品集に掲載されている長井さんのことばを引用すると、「現実の、身の周りの風景に限りを感じて、違う世界をみてみたい。魔法がかかったような風景をみていたい!」という長井さんの制作の原動力になっているもの。これが絵画という手法でキャンバスの中に表現されるとき、きらきらとしたここちの良いものたちで満たされています。
今回の写真作品も可愛らしい衣装、小道具、またはいりさんのコミカルな表情などで一見するときらきらしたものがつまっているのですが
作品が半分現実の風景にとび出してきたとき、長井作品の可愛らしい、きらきらした、という表現の裏に隠れた“生きることの根底にあるもの”のようなものが見え隠れする仕上がりになっている気がします。
普段自分が切り撮るモノとは違った、作家さんの世界に入り込むという面白い感覚の撮影でした。
こちらの作品は現在開催中の長井さんの個展でも展示中です。
長井朋子 / 個展 「Thousands of Finches」
2017年11月17日[金] – 12月10日[日]
A/D Gallery、六本木ヒルズ
/入場無料
A/D Gallery:http://www.roppongihills.com/events/2017/11/003393.html